019年秋。まこっちゃんを中心として準備が進められてきた、日本全国からクラウンが集まる大イベント『クラウンばっかりフェス』開催。その全容とは?

15:大展開期(2)未来創造編

 まこっちゃんがQAVO名義で始めた『クラウン的な稽古会』もすっかり定着し、毎年少しずつ新規参加者が入るようになりました。クラウン体験ワークショップを行った養護学校の教員も会員として参加していたのですが、その養護学校を卒業した生徒さんも『クラウン的な稽古会』に加入しました。そして時には単発的に、引きこもりの学生さんや生き悩む人や他ジャンルのアーティストさんなども参加するようになりました。いわゆる障害のある人も参加するようになり、インクルーシブとかダイバーシティと言われるようなことがクラウン的な稽古会で実現されるようになったのですが、まこっちゃんはそれに対して特別な配慮は一切せず、彼らにも他の会員とまったく同じように参加してもらっています。ようするに、そういう情況がごく自然に成立していったのです。それはシンプルで純粋なことでした。つまり——

「クラウンは楽しい!」

それは見る人にとっても、やる人にとってもということです。

 そして『もっとクラウン的な稽古会』のメンバーで結成されているクラウンチーム〝もっとファミリー〟にも養護学校卒業生メンバーは加わりました。今ではすっかり他のメンバーと何ら変わりなく、一緒にクラウンショーのステージに出演するようになっています。

 それは2019年に入り大きなステップアップを迎えました。

 ひとつめは〝もっとファミリー〟の一員であるぴんちゃんがプロデビューを飾り、実際にまこっちゃんとのコンビでステージに立ったこと。スーリーに続いてクラウン的な稽古会からついにふたりめのプロのクラウンが誕生したのです。

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 それだけではありません。そのぴんちゃんを中心に、養護学校卒業生のまっちゃん&ヨッシーの三人がクラウンユニット〝まよぴー〟を結成し、地域イベントや福祉施設のアトラクションに出演するなど積極的な活動を開始し、好評を博すようになったのです!

 それはまさに、クラウン的な稽古会から生まれた新しい展開でした。

 ぴんちゃんとまよぴーが今後どう活動してゆくのか楽しみです。

 2018年春、2009年に『クラウンカレッジ・ジャパン20周年記念クラウンパーティ』が行われてから9年後を迎え、クラウンカレッジ・ジャパン出身者から30周年をどうするか、という声が出始めました。『クラウンカレッジ・ジャパン20周年記念クラウンパーティ』の場を提供してくださったヨコハマ大道芸実行委員会さんからは2009年と同じように出演枠を作ってくださるというお話もいただきました。その際、20周年の幹事だった三雲さん(三雲いおり)からみんなに「同じことをするか、新しいことをするか」という問いかけがあったのです。

 折しも三雲さんはオデッサで毎年開催されているクラウンの祭典『コメディアーダ』に日本人として初出演を果たし帰国したばかりで、まこっちゃんと話をした時にコメディアーダの感想として「とても熱気があった。我々にも昔はあんな感じの熱気があったのに日本では今はそんな熱気も感じられなくなってしまった」と言っていました。そこでまこっちゃんは30周年の呼びかけに対して新しい「何か」をしようと声を上げたのです。

 声は上げたものの、その「何か」って何? という部分は何も決まってませんでした。そしてクラウンカレッジ・ジャパン出身者のうちおよそ20名が出演可能な場所、そのステージを実現させる手段を探るという、それはまったくゼロ状態から手探りのスタートでした。

 まず言えるのはクラウンが20名ほど出演するということだけで、他は何がどうなるかは不明確だったため、まこっちゃんがめぼしい機関や会社に企画を持ちかけてもなかなか相手にはしてもらえませんでした。逆に、さまざまな交渉の中で浮かび上がってきたのは、クラウンというものが正しく理解されていないという現実でした。そこでまこっちゃんは30周年イベントはクラウンを正しく知ってもらうための内容、お客様やあらゆる人に〝見せたいクラウン〟という構成で実施したいという思いに至ったのです。そしてそれは30周年というメモリアルではなく、30周年から始まる新しいスタートにしたいという思いにたどり着きました。そういったコンセプトが明確化されたからか、かつてまこっちゃんが出演してきた地元のイベントの関係者などが協力者として名乗りを上げてくれるようになったのです。

 さらに、クラウンカレッジ・ジャパン出身者のみならず、それ以後の世代のクラウンも一緒に出演してもらい、クラウンのバトンをつなげたいという発想も出てきて、日本中のクラウンに呼びかけをしました。

 それは、大手企業や代理店、イベンター、県や市などの行政が主催するのではなく、日本初、クラウン発の画期的なイベントです。そしてイベント名を『クラウンばっかりフェス』と決め、主催団体として「クラウンばっかりフェス実行委員会」を結成しました。

 『クラウンばっかりフェス』はやがて、神奈川県が実施しているマグカル事業と提携し、神奈川県のとある施設で開催することになりました。その施設はホールも備えていて、自然あふれる広大な公園内にあり、『クラウンばっかりフェス』にふさわしい環境でした。また、かつてこのようなイベントで使われることがなかった施設だったので、とっておきの会場でもありました。

 年は明けて2019年になり、開催日と会場も決まり、いよいよ具体的な準備が始まる段階まで順調に進みました。

 いや、順調に進んだかに思えました。

 しかし——

 開催日まで半年を切った時期に来て、開催日にその施設が使用できないという緊急事態に見舞われたのです!

 別の会場を探すか、開催日を延期するかという決断を迫られました。

 開催予定日まで5ヶ月もない時期になっていましたので、規模の大きいイベントが開催できるめぼしい会場はどこもすでに埋まっていてとても見つかりません。開催日を延期するのが賢明な選択です。しかし、物事には何事も最適なタイミングがあります。特にクラウンカレッジ・ジャパン30周年という年に開催する意味はとても大きかったので、無謀ではありましたが開催日は変えずに別の会場を探す方を選択したのでした。同時に、マグカルとの提携も選択肢から消えました。その日から新しい会場探しが始まりました。とはいえ、当然その会場探しは難航に難航を極めました。

 それでもついに、偶然に奇跡的としか言いようがない素晴らしい会場が見つかったのです! それもみなとみらいの中心地という素晴らしい場所です。それは開催日まで3ヶ月というギリギリの時期でした。しかし3ヶ月で全ての準備をしなくてはなりません。開場が決まったからと喜ぶ余裕もなく、急ピッチで準備が進められました。

 そしてついに迎えた2019年11月17日、『クラウンばっかりフェス』が開催されました。それは日本国内各地から総勢50人ものクラウンが大集合という、日本初の画期的なイベントでした。日本では誰も見たことがない光景が繰り広げられました。かつてないほどの笑顔と優しさに満ち溢れた一日がそこにありました。

 既存のイベントにはない大きな特徴はまず何といってもクラウンそのものがメインであるということ。賑やかしやアトラクションなどではなく、あらゆる局面で会場の雰囲気からコントロールしているのがクラウンということです。そして、既存のイベントでは発揮できずにいたクラウンの魅力が満載だということ。面白くて笑えて、同時に高度なホスピタリティでお客様をおもてなしいたします。

 会場内のいたる所でクラウンのパフォーマンスを見ることができます。

 屋外ステージではまこっちゃん発案の「クラウン競技大会」でクラウンたちがそのテクニックを競い合いました。これはまこっちゃんが見に行った大曲の全国花火競技大会がヒントになりました。27の花火業者が「10号玉芯入り割物」という同じ花火を打ち上げて腕比べをしていたので、同じように、クラウンも同じワザで腕比べをしたらきっと面白いだろうと思ったのです。クラウンにも共通のテクニックがあり、それぞれにちゃんとした名称がついているということをお客様に知っていただくこともできたし、やはりクラウンですから競技といっても面白くならないはずがありません。お客様はいうまでもなく、エントリーしたクラウンたちにとってもとても楽しい競技会になりました。

 また、世界大会2年連続1位受賞の経験を持つフェイスペインター☆ミホウによるフェイスペインティングは彼女しかやっていない回遊式で行います。会場内のどこででもフェイスペインティングしてもらえるということで、その珍しさも手伝って好評でした。

 バルーンの体験ブースもありました。クラウンとバルーンは切っても切れないイメージがあるかもしれませんが、ここでのバルーン作りワークショップは一味違います。細長いバルーンをひねって動物を作ったりするだけでは面白くありません。担当したてんちゃんと相談して、背負える赤鼻バルーンリュック作りにしました。作ったものはもちろん記念にお持ち帰りしていただけるのですが、これを背負って会場内を歩けば、バルーンのクラウンも一緒に会場内を巡ることになるというアイデアです。会場内の賑わい感が増すばかりでなく、近隣に対する宣伝効果もあります。

 クラウンメイク体験コーナーも作りました。別の場所に設置したフォトスポットにはクラウンシューズや衣裳が置いてあるので、マイクをしてからクラウンになり切って記念写真を撮影することもできます。また野外ステージではクラウンギャグ体験ワークショップも行われました。クラウンの典型的な動作や特徴的な動作などを実際に体験できます。見知らぬお客様同士でも一緒に体験するとすぐに仲良しになれちゃいます。

 見ているだけで楽しくなってしまうパレードもありました。

 有料のプレミアムステージでは質の高いクラウンのショーケースが行われました。単にアクロバティックなだけでない、クラウンの芸術性やパフォーマンスの奥深さなどを堪能していただけたかと思います。

 最後には出演したクラウン総勢50人による圧巻のグランドフィナーレ!

 クラウドファウンディングにご協力してくださったお客様には50人全員と一緒に写真が撮れるフォトセッションもご用意しました。50人のクラウンと写真が撮れるのは日本中でここだけです。

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 様々なコンテンツは本当にこれまでのイベントにはなかったものばかり。穏やかな好天にも恵まれ、まるで外国のような光景でした。

 『クラウンばっかりフェス』は日本の文化芸術の隙間に巣食う日本のクラウンが、ちゃんとしたジャンルとして確立され継続するためのスタートが築けたという手応えを得られるに足るイベントになりました。それは紛れもなく、日本のクラウンの未来へ続く道のスタートです。

 そして、それを継続することが次の課題です。目標は毎年クラウンばっかりフェスを開催することですが、一回目以上に二回目の方が困難が多いことでしょう。しかし、それこそが未来へ続く道である以上、その道を進むしかありません。

 そうしてここからまた新しいヒストリーも始まるのです。